鈴木はるかオフィシャルサイトはるかのアメブロ小説『小説』永遠ップ(とわっぷ)2

『小説』永遠ップ(とわっぷ)2

はい、こんにちは音譜
永遠ップの新作を公開します。
永遠ップ1

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永遠ップ2
 「あたしに出来ることは、なんだろう」
コンソールの画面は、無情にも最期の時を刻みつつある。
あたしは、キーボードを打つのを止め、画面をぼーっと見ていた。
地球を救う?そんな21世紀の世界系イメージじゃあるまいし、
第一そんなキャラクタじゃないよ。
 あたしは・・・そう、絵美さえ生きて居てくれればそれでいいの。
PIGGもちゃんと作動しているみたいだし。
絵美は、きっと未来で幸せになって・・・。
・・・いや、急に何かこみ上げてくるものがあった。
さっきまで、あたしにしがみついていた絵美の感覚が
まだ、残っている気がした。
頬を滴り落ちる熱い滴は、なんなのかなあ。
 「さあ、仕事仕事」
あたしったら、意外に冷静なのかもしれない。
あと2時間弱で、人類は滅亡するかもしれないというのに。
 絵美は地球を脱出して、もう月の周回軌道にはいっている頃かな。
あたしも、月に行きたかったよ。一緒にコールドスリープしたかった。
でも、あたしにはやるべき事がある。
 この厄災を引き起こした科学者の一人なのは、紛れもない事実だ。
一人でも多くの人を救う。言葉は簡単だが、その目標に対して
最後まで努力しなければならない。それが科学者としての責任だ。
そう心に決めている。
 だが、指令が言った事は真逆だった。
 「はるか君、君にはここに居て欲しかったんだが・・・」
 「はい、ここで地球への被害を最小限に食い止めるために尽力します。」
その刹那、指令が重い口を開く
 「君は天使を見たんだってね」
 「し、指令何故その話を?」
天使の話を、なぜ指令が知っているんだろう。
この話は、あたしとあたしの両親しか知らないはずだ。
 「アハハハハ」指令は高笑いをしながら言った。
 「黙って居たのだが、僕と君の父は古い友人なんだよ。
 こんな話をすると君は、コネだとか親の七光だとか拗ねるだろ?」
 「は、はい」
完全に見抜かれている。
 「すぐに、ここを発ち東京に戻りなさい」
 「しかし、被害最少プログラムが」
 「そんな事はいい。ここには君の作ったウランディがある
彼の能力があれば、君が居るのと一緒だアハハハ」
 「しかし、臨機応変な対応や・・」
 「うるさいっ、命令が聞けないのか」
こんな恐い指令を見たのは、初めてだ。
時間が無いのは確かだけど。
話の腰を折るように、ウランディからの自動音声が館内に響く
 【衛星ダイモス転送まであとヒトマルマル分】
 「指令、分かりました。で、東京のどこに?」
現場を離れるのは、嫌だが命令とあれば仕方はない。
一体どこに行けというのか。
 「実は、君の父親から連絡があってなあ。大事な用件らしい。
娘をすぐに帰してくれと、直談判してきた。なので、
東京都の浦和区の実家に行ってくれ、浦和区なら、この島から
浦和空港への直通シャトルが出ている」
 「わかりました。ですが少し情報を収集してからいきます」
 指令は、一瞬そんな時間は無いという顔をしたが、
どうせ言う事を聞かないだろうと、肩をすくめながら諦めた顔をした。
 「わかった。じゃ元気でな。君には申し訳なく思う。
リモートは君のIDで解放しておく」
 指令が、独り言で絵美は君に任せたかったと、
小さな声でささやいたのを、あたしは聞き逃さなかった。
 「はい!指令もお元気で」
あたしは、持てる限りの笑顔で指令に最後のお別れをした。
 余韻に浸っている間もなく、急いでCPUルームに向かった。
自動ドアが開く時間も惜しい。気がついたら、扉の前で足踏みしていた。
網膜認証用のセンサに顔を近づけると、扉がすーと開く。
 駆け足で操作台に向かい、殴りつけるようにコンソールをたたいた。
少し気がかりな事があったからだ。
そもそも、デリンジャー程度で座標が変わる物なのだろうか?
地球の衛星軌道には、あらゆる太陽風から地球を護るため
防護フィールドが3重に張り巡らされている。
コレを突破し、一体何が?
そんな事を考えている瞬間に、手が硬直した。
「う、嘘でしょう?」
あたしは、つい独り言を言った。
 なぜ、コードが書き換わっているの?
ウランディには、HSCが搭載されていて、
プログラムを書き換えるのは不可能だわ。
 いや、待って。まずは落ち着いて事実を受け止めよう。
コードを分析すると、確実にプログラムの改変が行われている。
 こんな技術が現地球上に、存在するとは考えられなかった。
 「ですよね!」
急に、後ろから男の声がした。
CPUルームに、私の知らない人が入るなんてあり得ない。
 「だ、誰?」
 「ごめんなさい、驚かせた?僕ですよ」
男は、悪びれる素振りもなく、微笑んでいる。
 「あなたは、大学の?」
 「そう、後輩の浦野です」
そういえば、思い出した。大学時代、あたしにつきまとったストーカだ。
 「人を呼ぶわよ」
あたしは震えながら、浦野を睨んだ。
 「HSC Haruka Secure Code、この技術は30世紀でも現役なんですよ」
浦野は突拍子の無いことを口走った。なんだろ30世紀って。
 「先輩は、尊敬すべき科学者です。恐れ多くて襲ったりしませんよ
仮にそんな事をしたら、この時空に何が起こるか
分かったもんじゃないです」
浦野は、続けて言った。
敵意が無いことは分かるが、こんな所までついて来るなんて尋常ではない。
しかも彼は、まだ学生のはずだ。
 「これ以上ウランディに干渉してもらっては、困るのですよ」
 「何が言いたいの?何が目的なの?」あたしは、責め続けた。
浦野は少し横を向いて、目をつむったまま会話を続けた。
 「僕は30世紀からタイムリープして、はるか先輩を監視していたんです」
はあ?タイムリープ?もはや、SFイメージだ。
この男は何を言っているんだろう。
 「時間が無いので単刀直入に言います。この世界は、
 未来だけでは無く、過去も不確定なのです」
 「どういうこと?」
 「言葉通りの意味ですよ。未来も過去も確定しているものなんて
 何も無いんです」
そういえば、以前そんな論文を読んだことがある。
 「はるか先輩から見ると、これから起こる事は未来なのでしょうが、
 僕から見ると過去なんですよ。過去は容易に改変できるので
 過去も未来も確定してないと言ったのです」
 「過去が容易に改変できるのなら、そうなるわね」
 「今起きているこの事象は、我々未来人が考える『最善』であって
 この歴史は、既に何百回も上書きされているんですよ」
 「なるほど、じゃあ、あたしの行動は最善ではないという事に
 なるわね」
 「そうなります。全部説明できる時間があるか不明ですが、
 核心部分を説明します」
 「先輩は、絵美さんの観測力を使った物体転移は、
 どんな事象だと考えて居ますか?」
 物体転移の解明は、ほぼ出来ている。この空間とは別の次元に
物体を消失させ、転移先で出現しているのである。
観測できなくなった素粒子などとよく似ている。
 だが、自分の事を未来人だという怪しい男に説明するいわれは無い。
 「意地悪な質問でしたね。でしたら、物体が消失する力が
 あったとしたら、その力の超対称性はどのようになっているか
 説明できますか?」
 「その部分は、研究中で全く分かっていないわ」
 浦野は、あたしの目が少し泳いだのを見逃さなかった。
 「はるか先輩は、ある程度予想ができているのですよね?」
 すごく心外ではあるが、予想は出来ている。
別次元に転移させるため、さらに別次元からの力が必要になる。
エネルギー保存の法則が適用されるなら、現空間から
エネルギーが消失していく一方で、超対称性が維持できなくなる。
 「一応ね・・・」
あたしの反応を見て、浦野は睨み付けるような強い口調で言った。
 「先輩と絵美さんが、この惨事を招いたんですよ」
あたしは、なぜか大きな衝撃を受け一瞬思考が停止した。
 「ちょっと待って、話が飛躍しすぎてない?」
 「どうやら待っている時間はなさそうです」
 「時間って、時間が無いのはあたしだよ」
 「これを持って、秋葉原のFG204に行ってください。
 先輩なら、自分で飛べるはず」
浦野は、直径が2cmも無いボタンの様な物を私に差し出した。
おそらく32TB(テラバイト)程度の非接触メモリだろう。
 FG204とはこの施設のプロトタイプがあった場所だが、
トップレベルの機密事項のはずで、一介の学生が
知ってるはずは、は無い。
 「あなた、本当に未来人?」
 「そう言ったじゃないですか。僕は、余計な事を
 しゃべり過ぎたため、デコヒーレンスされ消失するでしょう。
 ですが、最後に先輩と会話できて嬉しかったです。
 超空間シールドで保護されているそのボタンと、先輩が
 すべき行動は、頭に残ります。しかし、ここでの会話は、
 先輩は、観測する事ができないでしょうね。
 はるか先輩、僕が、先輩のそのブルースピネルの瞳を
 大好きだった事を知っていますか?そのツインテールを
 大好きだった事を知っていますか?その可愛い性格を
 大好きだった事を知っていますか?
 はるか先輩さようなら、僕の大好きな天使さん」
そう言うと、浦野は、砂漠の砂のように分解され消えていった。
 え?あたし、誰かと話してた?
 まあいいわ。あたしは、自分の左手に握られた小さな物が
何だったか分からないが、ウランディにセットしなければ
ならない事は覚えている。
 「な、な、なによこのメモリ」
思わず声が出てしまった。なんと容量は640EB(エクサバイト)と
表示された。地球上にこんな高容量の可般型メモリは、存在しない。
 構造は分からないが、インタフェイスは、ウランディと同期が
取れている。
 あたしは、恐る恐るファイルをウランディに表示させてみた。
その瞬間、身体中の血が、気がすっと引いていくのが、分かった。
『第34回ドクター鈴木殺害計画』
『鈴木博士血縁3世代抹消計画』
ちょっと、待って。なぜ?あたしが、あたし何をするの??
 冷静に冷静に。まず落ち着こう。自分に言い聞かせた。
 あたしは、深呼吸をした。
 よく見ると、ファイルを閲覧する順序などを指示された
ファイルがあった。
 指示ファイルを確認せず力任せにファイルを見てしまったから
恐ろしい内容と対面することになったのだ。
 人の話を聞かず、先に先に進んでしまうのはあたしの悪い癖だ
絵美にも両親にも、良く指摘されていた。
 だが、それがあたしの個性なんだと自分をフォローするも、
結局はむなしいだけだった。
 こんなファイルを見てられないわ。
 あれを使おう。
 ウランディの中には、Inquiry/Anser形式で受け答える
 疑似人格装置があるので、それを使ってみようと思う。
「ウランディかあ」ふと口に出た。
大学時代に、あたしが基礎理論を設計した
第16世代有機量子コンピュータを、現実的に組み上げたのは
後輩の浦野だった。
 浦野は、かなりの上級技術者であったが、
あたしは彼が苦手だった。あたしの行く所に現れ、
先輩先輩と、つきまとうストーカ。
 あれ、なんで浦野の事なんて考えているのだろう。
ウランディという名称自体、彼が考えたものなので、
あたしが作ったというより、浦野が作ったというのが正解だ。
指令はきっと、浦野を大学から召還しているかもね。
あたしより役に立ちそうだし。
 と色々な事を考えて居る間にセットアップは終了した。
あたしは、威勢良くかけ声を上げ疑似人格装置を起動した。
 「エミッ、セットアッープ!!」
思わず、周囲を見渡した。よかった誰も居なくて。
すると、旧世代のVocaloidのような、3次元イメージが表示された。
 「Redy コマンドを入力してください My sister」
 ちょっと、この声は、まずいわ。
あたしは、このまま絵美の声でしゃべらせると
どうにかなりそうだったので、音声データを別の者に変更した。
 「まず、このメモリと中身が何なのかを簡単に説明して」
 「Yes my sister このメモリチップは西暦ベースで30世紀から
 タイムリープして、あなたに届けられたものです」
 「過去に干渉?あたしがそれを確認できる論理的根拠は?」
 「このメモリチップは、現在の科学力では製造できません」
 「じゃ、過去改変とかしてタイムパラドックスとか
 どうなっているの?」
 「現在の時刻をtとするとΔt後にmの改変を行ったとしたら
 Δt*mの二乗の時空改変圧力が発生します」
 「もっと分かり易く、教えて」
 「では、過去に第二次大戦で投下された原子力爆弾が
 不発になるよう改変した事例を説明します」
そんな事までできるのね。半信半疑だが、私はすぐに答えた。
 「いいわそれで」
 「Yes my sister 広島の原爆投下は阻止されましたが、
 その後大阪に、広島型の数倍のプルトニウム型原子力爆弾が
 投下され犠牲者は100万人を超えました。歴史を改変すると
 その歪みが数倍、いえ数乗になって還ってくる事が
 判明しています」
 「親殺しなどのパラドックスは、どうなっているの?」
 「時空はすべて原因と結果によって、成り立っています。
 自分が生まれる前にタイムリープして、その親を殺したとしたら
 自分の存在も消えてしまうと考えてしまいそうですが、
 そうではありません。
 時空改変の影響は、波状伝搬して徐々に拡散しするように
 作用します。
 ですので、親殺しを行ったとしても、
 どうなるかは、分かりません。時空改変の波状伝搬は、
 拡大していくのではなく、極少になるように
 大きな力が働きます。私たちはこの力を、修正力と呼んでいます。
 親殺しの例からすると、自分が消失するパターンと
 自分がその親から生まれなかったパターンなど、
 いくつもありそうな因果に修正される事になります。
 どうなるかは、影響が最少としか言いようが無いです」
なるほどね。なんかインチキ臭いけど。
21世紀のイメージによく似ているわ。
 「世界線が変わるとかいう概念はあるの?」
 「21世紀のイメージにそんな概念はありますが、世界線は
 アインシュタインの提唱する論理しか存在しません」
 歴史改変の仕組みは、大体分かったが、
まだまだ分からない事だらけだ。
 「なんでダイモスを地球に転送したの?」
 「ダイモスの質量があれば、今後1万年は超対象性が
 維持できます」
 「月を掘削して持ってくるとか、他にも手段はあるでしょ?」
 「鈴木博士、その論理は間違っています。
 月から、ある質量の物体を地球に持ち帰るには、
 それだけのエネルギーを地球外に、放出しなければなりません」
冷静だと思って居たのは、あたしだけで、小学生でも分かる論理を
コンピュータに指摘された。情けない話だ。
 「そのために何十億もの人を犠牲にするのは、
 許される事ではないわ」
 「あなたは、ダイモスを転送しなかった歴史をご存じないので
 そんな事が言えるのです」
 「もっとひどい事が起こるのね」
 「Yes my sister 地球自体が消滅するどころか、全宇宙が消失します」
 「分かったわ、それでなんであたしが抹消されるの?」
 「私たちは、なんとか悲劇を回避する為に、あらゆる方策を
 とりました。観測力を使う馬場絵美、観測力を実用化した
 鈴木はるか、両名の完全な抹消です」
 「なるほど、それであたしが存在しているという事は
 できなかったのね?」
 「Yes my sister あなたと馬場絵美は、どんな改変を
 行っても必ず同じ時代で出会うように、修正力が発生します。
 30世紀現在で、この修正力の仕組みは解明されていません」
 
 なるほど、疑問はほぼ払拭された。
 あたしは、ウランディをリモートに切り替え、
CPUルームを出て、空港に向かった。
 「それであたしは何をすればいいの?」
 「Yes my sister あなたは、今のあなたに
 なってもらう以上の事は望まないです」
 「どういうこと?」
 「あなたに対して、外部から改変を行うと、
 毎回予測できない修正力が働きます。そして我々は
 あなたに干渉しない事が規定で決まっています。
 ですのであなたへの干渉は、あなたが行ってください」
 「どうやって」
 「2201年に飛んでください」
 「2201年って、もしかして天使?」
 え?えー?
もしかして、あの天使は、あたし?
21年前、あたしの前に突如現れた、真っ白い女の子だ。
目の色はそっくりだったと覚えているけど
顔までは思い出さない。
 口数は少なく、ただひとこと
 『わたしに逢いたかったら、わたしを研究しなさい』
 『自分に正直に生きるのよ』
 というような事を言ったのを覚えている。

あれから、あたしは父に色々な事を教えてもらって
量子力学を猛勉強した。
 わかったわ。全てがつながった。
 あたしは、自分自身に量子力学の研究をしろと
言っていたんだ。それがあるべき歴史だったんだね。
 ちょっと、まって、あのあと天使は消えたわ。
 「あたしは過去に行った後どうなるの?」
 「おそらくデコヒーレンスされ消失するでしょう」
 シャトルは、すぐに浦和空港に到着した。
式根島からのチャーター便だったので、
最優先処理されたのだろう。
 東京では、何も知らない人々が普段の生活をしている。
あたしは、この人達の人生をすべて奪う極悪人だ。
 過去で消失してしまうのがお似合いだわ。
「My sister あなたは極悪人ではありません」
「しっ、ここでは黙ってて」
あたしは、周囲を見渡した。
こんな会話を一般人に悟られる訳に行かないからだ。
 浦和空港から自宅までは、タクシーで5分ほどだ。
あたしは、待機しているタクシーに乗り込んだ。
 久しぶりに父に逢えるので、なんだか嬉しい。
そうこうしている間に、自宅についた。
 「父さん!ただいま!」
 「おお、はるか元気そうだね」
 「ダイモスの件は、知ってる?」
 「ああ、機密事項だが馬場が真っ先に教えてくれた」
 「父さん、ずるいよ。馬場指れ、、所長と友達だったなんて」
 「それで、どんな感じなんだ?やっぱりダメか?」
 父は、この先どうなるか詳しくは知らないようだけど、
私は正直に、言う事にした。
 「多分、地球上の殆どの生物は生き残れないわ」
その瞬間、バックに入れていたはずのメモリから、
3次元イメージが飛び出した。
 「いいえ、ちがいますmy sister」
 「なんだ、それは」
父は、目を丸くしてイメージを見た。
 「アハハハハハ」
私は、笑うしか無かった
 「それにしても、お前の趣味は・・・誰に似たんだ」
父は、ほとんど呆れている。
 「父さん、できるだけ地下の深いところに逃げて」
 「俺は、逃げんぞ。それより、渡したい物があってな」
父は、かわいいレターセットに入っている手紙を
私に差し出した。
 「手紙なんて、旧世代のものでしょ?」
 「そうなんだが、お前が天使を見たと言ったときに
 握りしめて居たんだ」
 「何よそれ、あたし宛て?」
 「すまん、何か危険な物かもしれないと思って
 預かっていたんだ。開こうにも開かないし」
 「それは、超空間シールドですね。my sister」
バックの中にしまったはずなのに、また出てきた。
なんておしゃべりな性格なんだ。
 父は、摩訶不思議な顔をしている。
 「エヘヘ、いいのいいの」
 「お前が天使を見たと言ったとき、そんな者が
 存在するはず無いと思っていた。たが、急に勉強を
 教えてくれと言い出す始末だし、何があったのか
 父として気にはなっていたんだ」
 「3歳の娘に、相対論を教える親もどうかと思うけどね。
 でも、父さんのお陰でここまで成長できたよ」
 「俺は、お前を誇りに思う。立派になって本当に嬉しいよ」
 「父さん、数式しか頭に無い人だと思って居たのに
 天使を一緒になって探してくれて。フフフ」
 「バカいうな、科学を研究すればする程、天使などの
 超常現象は否定できなくなるんだよ」
 「それで、父さんの用事ってなに?」
 「ああ、いま研究しているのが、
 『因果律の収束』というテーマなんだけど、これを研究していると
 色々な事が分かったんだ。仮に結果として、
 はるかという個体がこの地球上に存在する事が決まっていたら、
 その原因である両親の存在なんて、誰でも良いという論理だ」
 「はあ?」
とても理解できる話では無いが、修正力の話を聞いたあとなので
もしかしたらとは思う。
 「まあ、聞けよ。両親が存在するから、はるかが居るのではなく
 はるかが居るので、両親が決まったという考えなんだよ」
 父さんは、何を言っているのだろう。
鶏と卵ではあるまいし、そんなのおかしいじゃない。
だって、あたしが父さんと母さんから生まれたのは事実で
父さんと母さんの遺伝子を50%ずつ引き継いでいるのは
検査で確認済みだし。
 「そんなの信じられないわ」
 「遺伝子のはなしかい?クローンでも無い限り100%一致は
 あり得ないだろ、ある程度一致する人を世界から探し出して
 結婚し、子供が生まれた事にすればそうなるだろ」
 「す、すごい研究ね」
 「ああ、馬場から地球は多分ダメだと聞いてな、
 これだけは、はるかに言っておきたかった」
 「な、何?」
 「はるか、俺たちの間に生まれて来てくれて、ありがとう」
一瞬目が点になった。父は何を言い出すんだろう。
 私を産んでくれた母、立派に育ててくれた両親、
あたしは、両親を本当に尊敬している。その両親に
生まれて来てくれてありがとうと、感謝されるのは
少しくすぐったい感じであった。
 あたしは、涙が出そうになったが、それを悟られると
恥ずかしいので、父に抱きついた。
 「これこれ」
 父は照れているのかな。でも、ずっとこうしていたい。
 「あたしも、父さんの娘で幸せだよ」
 父に、逃げてとは言ったものの、父は逃げないのだろう。
あたしは、逢えなかった母にもよろしくと伝え、実家を後にした。
父には、用事が済んだから帰ると伝えたが、
帰れない事は、歴史で決まっている。
 きっとあたしの顔を見て、感の良い父は気づいていると思う。
それなのに「またあとでな」と、笑顔で送り出してくれた。
 実家からは京浜東北リニアがあるので、
秋葉原までは乗り換え無しで行ける。
 秋葉原にはすぐ到着したが、その前に、
するべき事があった。
 秋葉原には、様々なショップがあり、
あたしは、その中のコスレイヤーグッズ店に入った。
店の中を足早に物色し、
真っ白な天使のローブと、おもちゃの羽が付いたセットを買った。
もうひとつ覚えている事があった。
あたしとの決定的な違いは、あの時の天使はポニーテールだったのだ。
ゴムはそのまま使えるが、白いリボンも買う必要があった。
 同じショップに真っ白なリボンも売って居たので
すぐに買い、試着コーナーで試して見る事にした。
 あたしはツインテールをほどき、ポニーテールにしてみた。
 「うわ、似合わない・・・」
思わず吐露してしまった。
天使の衣装は、すぐに着用できないのでFG204で着替えようと
考えている。
 あたしは店を出て、FG204へと向かった。
 FG204は、雑居ビルの2階にある。
網膜認証セキュリティのため、鍵などは必要ない。
 「こんなので、タイムリープなんか出来るのかしら」
 「Yes my sister 馬場絵美の情報が沢山入っているので
 ちょっとしたプログラム変更で可能です」
 「プログラム変更って、あたし出来ないわよ」
 「変更は私がやりますので、ウランディと接続して下さい」
 「わかったわ」
あたしは、リモートIDでログインしFG204とウランディを接続した。
データリンクが確立し、ウランディとFG204の接続が行われた。
その瞬間に、自動音声が
 「できました my sister」
さすがのあたしも、驚いた。接続した瞬間にプログラムを作成したのだ。
 「え?もうできたの?はや」
 「もうひとつ、お願いがあります」
 「私のメモリを左手に持ち、バルスと言ってください」
ち、ち、ち、ちょっと待って、何よそれ。あたしのレベル・・・。
30世紀の人間って一体何者なのかしら。
あたしは言われた通りにやった
 「バルス」
いたたた。その瞬間、ボタンから針が出てきて私の体を突き刺した。
 「ちょっと、何したのよ」
 「超空間シールドを施しました。約60秒存在する事ができます」
 「60秒って・・・」
あたしの命は2201年に飛んだら、60秒で尽きる事になるのね。
いっぱりやりたい事もあったけど、絵美と一緒に居られないんじゃ
生きてても仕方ないか。それと、何億人もの人の未来を奪う
私の責任にしては、小さすぎるわ。
 「それでは、行きます。そのソレノイドの上に乗ってください」
 「ちょっと待って。天使になるから」
あたしは、天使のコスチュームに着替え、
ポニーテールを結い直した。天使が化粧というのもおかしい
ため、すっぴんで望むことにした。
 全体の写る鏡があったので、それを眺めで確認する。
準備ができたので、イメージに応答する。
 「いいわ」
 「Yes my sister あなたは私に、馬場絵美の音声と人格をインプット
 しましたね。」
 「ええ。音声は変えたけど、人格は擬似的なもので絵美とは違うわ」
 「ですが、なぜか、デジタルデータの私は、あなたと離れたくありません」
 「それは、あたしの願望だよ、あたしがそうプログラミングしただけだよ」
 「Yes my sister それでは行きます。良い旅を」
 目の前が、真っ白になったと思ったら、
見覚えのある風景だった。これは、あたしの部屋だ。
 時間は、夜のようだ。
 そこで気づく、あたし、手紙忘れた。しかも中に何を書いていたのかも
見てなかった。なんてドジなんだろう。
 「はるかちゃん?」
寝ている私を、起こしてみた。
目を擦りながら、ショートカットの女の子は、あたしを見た。
そうだ、この頃はまだツインテールではなかった。
 「お姉さんだーれ?」
 「あたしは天使」
 「てんしさん?」
 「そう、可愛くて良い子の所に来るの」
 「はるか、良い子じゃないよ。今日もママに叱られたの」
 「うんん、はるかちゃんは、いい娘だわ。ところで天使さんから
はるかちゃんにお願いがあるの」
 「おねがいってなに?」
 「はるかちゃん、あたしに逢いたかったら、あたしを研究してみて
 きっと逢うことができるわ」
 「うん」
 「それとね。はるかちゃん。自分に正直に生きなさい。
 大好きな人を守ってあげてね」
 「うん。てんしさんどうしたの?泣いてるの?」
 「うんん、じゃあね。はるかちゃん」
デコヒーレンスって、どんな感じになるんだろう。
痛いのは、嫌だな。でも、それも罰だよね。
自分の腕を見ていると、半透明に透けているの見えた。
左に持ったメモリは、超空間シールドで保護されているのに
同じように透き通っている。
意識が段々遠のき、視界がホワイトアウトされてきた。
 あたしは、天国に行けるのだろうか。
頭がぼーっとしている。でも、すごくいい匂いがする。
この匂い知っている。これは、絵美の匂いだわ。
 天国って好きな人と一緒に行けるのね。
 「・・・か、・・・るか、しっかりして!!」
 遠くから、天使の声が聞こえてきた。
天使って、あたしじゃ・・・
 「はるか!」
目を開けると、そこにはあり得ない人物が居た。
 「絵美?」
 「よかった。目が覚めて」
 「絵美だよね。しかもここ重力が・・・」
 「はるか・・・なんて格好しているの?」
 「えと、これは、色々ありましてデスはい。」
 「それより、重いのでどきなさいよ」
絵美は、あたしに膝枕をしてくれていた。
あたしは、ずっとこのままでいたかった。
 「ところで、なんであたし月にいるの?」
 「そんなの私が聞きたいわよ。はるかを呼んだら
いきなり、天使のはるかが現れて、びっくりしたわよ」
 ここは、月基地に間違いない。
 絵美が目覚めているという事は西暦でいうと2520年くらいかな。
あたしは、月基地のマザーコンピュータであるノラを
起動してみた。まず確認したいのが現在の日時だ。
なになに、2472年?なんでそんな中途半端な。
コンソールに出力された内容は、
 『デブリの衝突により、一部施設が破壊、
馬場絵美のカプセルに異常を検知したため、
緊急覚醒、他47名はコールドスリープ中』
 「そうなの、私だけ起きちゃって、どうしていいか
分からなくって」
 「それで絵美は、あたしを呼んだの?観測力で」
 「うん・・・」
 「250年も未来に、しかも地球から月まで転送するなんて
尋常じゃ無いわ。ちょっと説明させる」
 あたしは、一緒に持ってきたメモリをノラに接続した。
 「エミ、セットアーップ」
 私の叫び声に、隣の本物の絵美は呆れかえっている。
 起動キーは、変更できないし、あたしの声紋データで無いと
動作しないから、しかたなったのだ。
 「ちょっと、説明してくれるかな」
 となりで三次元イメージをみている絵美が、大笑いしている。
それと、天使のポニーテールも、壺にはまったようだ。
 「Yes my sister 西暦2472年成功ですね」
 「なによ成功って」
 「私は、いいましたよね。いつの時代でも必ず出会うと」
 「それは、そうだけど」
 「ですので、保護シールドを注入したとき、
 観測力の遺伝子を少しばかり注入してみました」
 「な、な、な、なんてことを」
 「もっとも、馬場絵美とあなたの二人が同じ
 観測力を使わなかったら、実現はできませんでしたけどね」
 なるほど、私は絵美のほうを見て、聞いてみた。
 「そうなの?」
 「だって、はるかくらいしか助けてくれそうな人居ないし
月には、数年分の食料程度しか無いし、こんなところで
一人でいたくないよ」
 「ピエールでも起こせばよかったのに」
 「あたしね。見たよ、はるかのペンダント」
 「いま、その話するか・・・」
あたしは、顔が真っ赤になっていくのが自分でも分かった。
 「それでね。一番そばに居て欲しかったのは、はるかなの
自分一人で生きて行かなくっちゃと思った瞬間に、
はるかの事を思い出したの。だから、はるかを一番に呼んじゃった。」
・・・そんな。一緒に居るときは、そんな素振りは全く見せなかったのに
 「そう・・・」
 あたしは、どう受け答えしていいのか分からず、つぶやいた。
 「コールドスリープから覚めて、一杯泣いちゃった」
 「うん。これからは、ずっと一緒に居るから」
盛り上がっている最中に、三次元イメージが水を差す。
 「my sister 地球に帰還してみましょう。このまま
ここの空気や食料を使う訳にはまいりません」
 「シャトルはあるの?」
 「Yes my sister ここには正副予備の3機のシャトルがあります」
 「わかったわ」
その前に、ノラからデータを取得する必要があった。
地球の設備は壊滅状態なので、使えるものは無いだろう。
ここで、生活できるための基盤を準備しておかなければならない。
 地球上のデータは殆ど残っていなかった。
月から、地球を観測すると、微かだが、明かりが見える場所があった。
人類は絶滅していなかったのだ。
 少し安堵の表情を浮かべたのもつかの間、
大陸データを見てみると、全ての大陸は原型をとどめて居なかった。
 あたしは、明かりの見える場所に着陸しようと絵美に提案したが、
絵美が阻止した。理由は、文化の進化状態が著しく異なるため
何をされるか分からないからだ。
 そして着陸を決めた場所が、生命反応が全く無い旧mapで宮古島あたりだ。
植物と水さえあれば、ある程度生存できる。
 ただ、あたしは、それ以上の快適な生活を目指していた。
植物遺伝子に観測力遺伝子を作用させ、成長を著しく
促進する方法だ。これにより、現地に何も無くても生活する事ができる。
 ほとんどの植物は15時間程度で収穫が可能になり、苺なら5分程度で
収穫できるよう遺伝子操作を行った。
 一生懸命コンソールを操作している私に、
絵美が話してきた。
 「はるか、ほんとうに私の事、好きなの?」
 「うん」
 「だって、さっきからカチャチャと、全く相手にしてくれないじゃない」
 「絵美は、地上に降りて、ひからびたいのかね」
 「そうじゃないけど・・・」
実際に、こんな惨事を引き起こした、
あたし達が幸せになっていいものなのだろうか。
しかも、女の子同士で好きとかって、いろいろ大丈夫なのだろうか。
いずれにしても、あのあと起きた事は、絵美には
言わないでおこう。
 「でーきた!」
やっと作業が終わった。さて、シャトルに乗って帰還するか。
メモリチップは、月においておくことにした。
私は、植物遺伝子の一部のみを持ち帰ることにした。
 無人島に女子二人、好きだと言っているけど
ケンカとかするんだろうな。でも、あたしの望んで居た未来が
現実的に訪れたんだという幸せをかみしめている。
<終わり>
永遠ップ2 ~二人のイブ~
この物語はフィクションです。

『『小説』永遠ップ(とわっぷ)2』へのコメント

  1. 名前:mimi 投稿日:2013/12/23(月) 01:23:31 ID:54738814c 返信
    すごく面白かったです≧(´▽`)≦
    永遠ップ2は1の続きかなと思ったら
    はるかさんサイドからの話になるんですね
    絵美さんの気持ちは?えええ???
    と思いながら1を終えたから
    ハッピーエンドでよかった~T^T
    はるかさん消えちゃうと思ったし^^;
    私にはちょっと漢字が多すぎてw
    ちゃんと理解しきれてないかもですけど
    漫画でも読んでみたいです♪
  2. 名前:りるる 投稿日:2013/12/23(月) 08:46:43 ID:54738814c 返信
    2日に分けて読んじゃったよ~(*/∇\*)えへw
    難しい用語は正直 ほぼわからんかったけど(あふぉだからw) でもハッピーエンドだ!!!って嬉しくなっちゃったwww
    今日はイチゴメインの食事だな~w っておもろかったよ(*≧艸≦)
    とりあえず天使のポニテはるかちゃんが見たいかもwww そんなに似合わねぇのか!??w ってwww
    (ノ∇≦*)キャハッッッ♪
    また余裕があったら この先が読みたいわ~w
    ワクワクq(≧∇≦*)(*≧∇≦)pドキドキ
  3. 名前:はるか 投稿日:2013/12/23(月) 11:49:57 ID:54738814c 返信
    >mimiさん
    読んでくれてありがとうございます(o^^o)
    はるか視点の方が、書きやすいかなぁと
    思って変えてみました。一人称も勝手に
    変更していたりします^^;
    絵美さんは、設定上1の時から好きだったのですが、
    その気持ちに気づいていなかったのですね。
    漢字や専門用語を多用したのは、
    物語が陳腐なのを誤魔化すためだったりしますw
    マンガ!!
    私は絵が描けないので・・・
    ありあさんに天使のポニーテールをww
  4. 名前:はるか 投稿日:2013/12/23(月) 11:54:14 ID:54738814c 返信
    >りるるさん
    読んでくれてありがとうございます(o^^o)
    難しい用語、ごめんなさい(>_<)
    数ある過去改変のアニメのどれにも該当しない
    物を考えてみたくなって、こんなになりました。
    (私が知らないだけであるかもですがw)
    天使のポニーテール・・・どこから
    発想が出てきたのか分からないのですw
    天使と言えば、白いローブと金髪なんですが
    ポニーテール??って感じです。
    色々な続編ができるように伏線は
    設定したのですが、また時間のある時に
    書いてみたいと思います。
  5. 名前:ありあ 投稿日:2013/12/23(月) 19:08:49 ID:54738814c 返信
    悲恋かと思いきや、最後ハッピーエンドで良かったです~^^
    理論展開も面白かったです。
    でもかなり租借出来てない部分があるので又何回か読みたいです~。
    天使のポニーテールのはるかさんがまったく想像できません・・(笑)!
    頭にわっかはあるのかな、服はキューピッド系なのか女神系なのか・・
    描かせてもらえるなら描きたいです?
  6. 名前:はるか 投稿日:2013/12/23(月) 21:02:37 ID:54738814c 返信
    >ありあさん
    読んでくれてありがとうございます(o^^o)
    このカテゴリは90%が、ヘテロエンドや
    バッドエンドになるのですが、10%を
    目指してみました^^;
    推敲とかちゃんとやってないので、
    矛盾しているところとかあると思います。
    気兼ねなく教えてくれたら、こっそり
    修正できますし^^;
    画像の件は、振って申し訳ないです。
    設定上買ったセットには、頭にはめる輪っかが
    付いて居たのですが、それは釣っている棒が
    見えるので3歳児でもバレると思い使わなかったのです。
    服は女神系です。
    ゆぴあとかも大変でしょうし、ほんと、冗談レベルですから。
    でも描いてくれると嬉しいです^^
  7. 名前:紫愛莉 投稿日:2013/12/26(木) 07:45:27 ID:de64dead1 返信
    永遠ップ、
    2回読んじゃった(*^-^*)
    1度目は流し読み^^;;
    で、時間があるときにじっくりと~♪
    はるかちゃん目線なのが、
    1と違って面白かったよ^^
    普通に、その続きと思っていたからね~w
    ハッピーエンドで終わってよかったぁ(*^.^*)
    こんなお話しつくれちゃうなんて凄いわ~☆
  8. 名前:はるか 投稿日:2013/12/26(木) 09:31:01 ID:de64dead1 返信
    >紫愛莉さん
    どうもありがとうございます(o^^o)
    なんか、後半雑になってしまったのですが、
    いつもこうなるのですよね・・・時間があっても
    ハッピーエンドでほんとよかったです^^
    この続きも書きたいですが、多分
    二人は2回目の大げんかをする事になりますので
    それが、ちょっと嫌だなぁとw
    また別の視点で書けたらと思ってます^^